酒井一成さん
千葉県立京葉高等学校第21代の校長先生。
新型コロナウイルスにより、他地域同様大きな影響を受けた市原市。オープンロードでは、地域への打撃を少しでも和らげられないかといくつかのプロジェクトに取り組みました。ここではそのひとつである千葉県立京葉高校での授業配信プロジェクトをご紹介します。 談:小川起生 2020年6月26日
市原市でも、新型コロナウイルスの影響で学校が休みとなった4月の始め。Co-Satenに遊びに来ていた高校生に「休校中なにやるの?」と何気なく聞いたところ「遊びます!」との答えが。自分が高校生の頃を思えば、当然そうなるよな〜という答えではありましたが、大人になった自分は、なんとなくモヤモヤも感じました。
遊ぶのは悪いことじゃないとは思いつつも、完全に勉強から離れてしまうのはもったいないし、子どもたちにとっても、きっといいことばかりじゃない。そこで、オープンロードスタッフなど知人をたどり千葉県立京葉高校の酒井一成校長に連絡をとりました。
たまたまオープンロードは、この年の3月に柏市の中学校で卒業式の映像配信をやっていました。卒業式の保護者入場不可という決定をしたため、子どもの卒業式を観たいという親御さんの声が多数あがり、柏市から相談を受けた僕らが式の様子を保護者に届ける映像配信を行なったのでした。
そんな映像配信の話などを酒井校長と話すうちに、「ぜひ京葉高校でも授業配信をやってほしい!」という話をいただきました。
しかし、県立高校で映像配信のようなプロジェクトをスピード感を持って行うハードルは思った以上に高く、また、酒井校長の判断で映像配信を行うことは決まったものの、予算をつけることが難しく、僕らとしても今回はボランティアでできる範囲の協力をするというやり方で、プロジェクトは始まりました。
そんな制限のある中で、全学年の全教科を1ヶ月全て配信するようなことは難しく、オープンロードとしてどんなことができるか検討した結果、
『教科書とは無関係に、学年を問わず、生徒が教科に興味を持てるような、オリジナル授業を各教科の先生に考えてもらい配信』
することに決めました。
先生たちも、最初は「何をしたらいいんだろう」と戸惑っていましたが、さすがは授業のプロ。要点を理解してからは「こんなことをしたい!」「あれはできないの?」とアイデアがどんどん出てくるようになりました。
例えば、理科・社会の面白い話を3本立てで紹介したり、体育の先生が休校明けに予定されている体力テストに向けて家でできるトレーニングビデオをつくったり、家庭科の先生がクッキング番組をつくったり……。そうして出来上がった合計十数本の映像をYoutubeで生徒向けに限定公開しました。
もちろん、たった十数本の映像で休校中の授業を補えるわけではありません。それでも、全校生徒数200人程度にも関わらず、再生回数が1000回を超えた動画もあることから察するに、繰り返し観てくれた生徒が少なからずいたのだと思います。
学校・勉強との関係が突然に、そして完全に切れかかっていた生徒に対して、少しでも先生とのコミュニケーションや、勉強と触れ合う機会をつくれたことは、決して無駄ではなかったと感じています。
対面での授業が重要なことはもちろんですが、ネットだからこそできる授業もあると、今回のプロジェクトを通して強く思いました。一人ひとりの生徒に対するきめ細かなサポートや、教室では引っ込み思案になりがちな生徒もチャットなら活発に意見が言える(場合もある)など、オンラインならではのさまざまな利点が考えられます。
だからこそ、こうしたネットとリアルのハイブリッドな授業の試みは、アフターコロナの社会でも活発化していくと思います。例えば、勉強が苦手な子のために、各教科の基礎を丁寧に指導する動画や、もっともっと勉強したい子のために、応用問題を数多く指導する動画のように、生徒のニーズに合わせた動画をアーカイブしておけば、さまざまな子どもの個性に応じた教育が可能になります。
こうした内容を全て対面授業でやろうとしたら、先生の数が足りなくなってしまいます。ですが、動画であれば、最初の動画作成は大変ですが、その先は生徒ごとにどの動画を観たら良いか指導することで、多様な教育を実現できるかもしれません。
オープンロードでは、今回得た経験を活かし、そんな授業の形を公民連携プランとして市原市に提案する予定です。新型コロナウイルスで受けた打撃を少しでも未来の財産に変えていけるような試みを自治体・民間で取り組んでいければ、市原市をコロナ前よりも良いまちにすることも可能だと考えています。
千葉県立京葉高等学校第21代の校長先生。
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